面白いって難しい

佐藤亜紀『激しく、速やかな死』(文藝春秋)。

短編集。中でも、フランス革命のギロチンの刃から逃れ、新大陸に着いてデラシネな主人公を描く「荒地」が、美味しく思う佐藤亜紀の技。物語の構造として、貴種流離譚を選ぶ事は、読者にとっては安心して読める。

「馬鹿は読むな、お互い時間の無駄だ」と、作者は言いたいと知って愕然。無知な読み手で悪かったよ。けど、作り手の中で完結する物語が「完成」するのは、どうしても読み手と作者がコントロール出来ない域で、読み手の側に誘われて「完成」するのであって、読者を馬鹿とか無知とか責める態度はどうかと思う。

この作者はは、読者(本読みを自負する僕を)を、信じてはくれないのだな。

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